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特救指令ソルブレイン |
機種 |
ファミリーコンピュータ |
発売元 |
エンジェル |
開発元 |
ナツメ |
発売日 |
1991年10月26日 |
定価 |
6,000円(別) |
プレイ人数 |
1人プレイのみ |
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ステージ数 |
7面 |
ライフ制 |
あり |
残機制 |
あり |
コンティニュー |
無限 |
パスワード |
なし |
難易度選択 |
なし |
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ストーリー
これは、特装救急警察ソルブレインが、正式に発足される前の物語である。
ある日、町が謎のロボットによって占拠された。警官隊を動員しても、このロボット達を鎮圧できないと判断した正木本部長は、西尾大樹に出動を命じた。
だが、ヘビータイプのソリッドスーツ・ソルブレイバーはまだ最終調整の段階で、ケルベロス-Δ(デルタ)を初めとする、一切の武器はまだ装備されていない。苦戦が予想される戦いではあるが、大樹はソルブレイバーにプラスアップするとロボット兵士に戦いを挑んだ。
この謎のロボット達の黒幕は、人工知能により意志を得た攻撃型ロボットであった。こいつの目的は、サイボーグ兵士を操って核ミサイルを発射させ、人間はもちろん、地球をすべての動物が住めないロボットだけの惑星にしてしまうことなのだ。
地球を悪のロボット達の手にわたしてはならない。ソルブレイバーはこの任務のために作られた特殊兵器と共に、未知なる強敵に単身立ち向かっていった。
BURNIN'ソルブレイバー!駆け抜けろ、特救指令ソルブレイン!!
悲運の改造キャラゲー
1991年10月。海外のファミコン、NESで、『シャッターハンド(Shatterhand)』というゲームが発売された。舞台は、悪のサイボーグ軍団が暴れまわる近未来。主人公はグラサン&革ジャンを着用した、シュワ似のマッチョ。この暑苦しいオヤジは一見生身、だが、迫り来る鋼鉄のサイボーグを!飛んでくる音速の銃弾を!「素手で」殴り倒していく。そう、彼の両手は鋼鉄の義手、サイバネティック・ハンド。まさに地上最強の鉄拳を持つ男、その名も「シャッターハンド」!……日本のナツメによって開発されたこの作品は、オリジナリティあふれる世界観とゲームシステム、そして高い完成度を持った、傑作アクションだ。
この『シャッターハンド』は、海外とほぼ同時期に、日本のファミコンでも発売されている。ただしエンジェル=バンダイの力技によって、タイトルや一部グラフィックを当時放映していた特撮ヒーロー番組のものに差し替えられて。そう、それこそが『特救指令ソルブレイン』なのである。つまり本作は元々、「テレビ番組『ソルブレイン』のキャラゲー」として企画されたものではなく、本来意欲的なオリジナル作品『シャッターハンド』として企画されたゲームだったのだ。
上辺だけ無理矢理『ソルブレイン』に差し替えてはいるが、全体の違和感は拭えるはずもなく、また原作の設定もまるでゲームに活かされていない本作は、「『ソルブレイン』のキャラゲー」としては微妙である。だが、ひとつのアクションゲームとしての完成度はほぼオリジナルのまま、素晴らしいものだ。数あるファミコンアクションの中でも、トップクラスの出来だと言えるだろう。
基本システム
オリジナルの『シャッター「ハンド」』というタイトル通り、このゲームには元々、「生身のオヤジが、鋼鉄のサイボーグを素手で殴り倒す!飛んでくる銃弾を素手で弾き返す!」といったノリが、最も重要な基本コンセプトとして存在している。一見生身なのにメチャクチャ強い、その豪快なミスマッチがプレイヤーを熱くさせるわけだ。
残念ながら『特救指令ソルブレイン』では、主人公が生身のオヤジから、スーツ着用のソルブレイバーに差し替えられたことで、そのインパクトは随分薄まってしまった感がある。だが、とにかくあらゆる敵や障害物を、ボカスカ殴り倒していく爽快感がゲームの「肝」であることに違いはない。
パンチには2つの種類があり、Bボタンを連打するとノーマルパンチを2発繰り出し、以後決めパンチの連打となる。ジャブ!ジャブ!フック!のコンビネーションが小気味良く、当たると「バシュンッ!」と最高な音がする決めパンチは、ノーマルパンチの倍の威力がある。また、パンチで敵の弾丸攻撃を消すこともできる。
だが、パンチはリーチが極めて短いという欠点があり、そこでもうひとつの武器、オプションの出番となる。オプションはソルブレイバーの斜め上に位置し、Bボタンを押すとソルブレイバーのパンチと同時にオプションも攻撃する。遠距離攻撃も可能なため非常に役に立つが、オプションには固有の耐久力が存在し、ある程度ダメージを受けると消えてしまう。
オプションは、パーツボックスに入っているオプションパーツを3つ集めることで装備できる。パーツにはα、βのどちらかが表示されており、この2種類の表示を3つ組み合わせる(“ααβ”、”βαβ”、といった具合)ことで、8種類中から好きなオプションを得ることができる。
入手方法もユニークだが、8種類ある攻撃方法も、どれも一癖あって面白い。貫通はするが連射の一切きかないレーザー、破壊力は絶大だが目の前しか斬れないソード、いかにも大道芸っぽいうねりまくる火炎放射器などなど、様々なプレイのバリエーションが楽しめる。
また、ソルブレイバーがオプションをすでに装備している状態で、再びそのオプションと同じ組み合わせを作ると、オプションの代わりにトルネードバーストという銃を装備することができる。これがもう射程長いわ、判定デカいわ、貫通するわ、威力は高いわと馬鹿みたいに強力で、約1分間撃ち放題。しかもトルネードバースト装備中、ソルブレイバーは無敵になる。
このトルネードバーストを取るためには、オプションを壊さないよう大事に持っていかなければならず、なかなか苦労するが、それに見合うだけの強さである。うまくオプションパーツの取り方を調整して、ボス戦の直前でトルネードバーストを装備できれば、ボスですらボコボコにすることができてしまう。このカタルシスは最高だ。
ゲームは7つのエリアから成り立っており、最初のエリアAと最終エリアGは固定されているが、間の5エリア(B~F)はプレイヤーが自由にセレクトできる。ツルツル滑る氷面、水圧で思うように動けない水中面、強制縦スクロールのエレベーター面など、エリアごとに実に多彩なギミックが用意されており、飽きさせない。中でも、最も印象的なのは重力反転エリアだ。『ストライダー飛竜』さながらに、いきなり天井が床に、床が天井になってしまう大仕掛けである。
また、背景の網のあるところでは、その網を足がかりにして更に高くジャンプ(網の前でAボタン)したり、網にへばりついたり(網の前で十字キー上)することができる。網にへばりついたまま攻撃も可能で、アスレチックなアクションが楽しめる。
エリアの最後に待ち受けるのは、個性的なボスだ。特徴としては、どのボスも人間サイズで、画面を埋め尽くすようなデカキャラは登場しない。だが、そのぶん画面中を走ったり飛び回ったりと、総じて動きが素早いので、熱いバトルが展開されるのだ。
このように本作は、実にクールでオリジナルなアイデアにあふれている。どれも決して「革命的」ではないが、微妙に「ありそうでない」、ちょっと捻りの効いた面白さがあると言えるだろう。
KAGEを継ぐもの
『シャッターハンド』=『特救指令ソルブレイン』の開発を担当したのは、前述の通り日本のナツメ。地味ながら技術面、内容面ともに完成度の高いゲームをリリースすることで、玄人ゲーマーからは非常に高い支持を受けているメーカーだ。
そして本作のメインスタッフはプログラムの石原氏、グラフィックの谷口氏、サウンドの水谷氏など、1990年に同社からリリースされた秀作『KAGE』と全く同じ面々である。よって、本作の完成度の高さも保証されていると言っていい。
まず、とにかくとっつきやすいのが良い。操作感は軽快だし、エリアセレクトがあるのでとりあえず6面ぶんは一通り遊ぶことができる。また、「即死」、「落下死」の類も一切ないため(穴に落ちても、下は必ずダメージ床になっている)、ブチブチとテンポを崩されることなく、ある程度は必ず進める。
かと言って、やはり決して簡単なゲームではないのがうまいところだ。Aボタンを押す長さでジャンプの高さを調整できるのだが、高く跳びすぎると天井のダメージゾーンに頭をぶつけてしまったり、随所でその微妙なボタンタッチを試される。
またライフ制とは言え、ダメージを受ければオプションやパワーアップはどんどん失われてしまう。そしてオプションを失うと、このゲームは極端に難しくなる(特にボス戦)。ただし、逆にオプションやパワーアップをうまくキープできれば、サクサクと進めてしまう。このあたりのバランスが絶妙で、自分の上達が実感でき、攻略しがいがある。
グラフィックとサウンドも高水準だ。緻密なグラフィックは『KAGE』の頃に比べると格段の進歩を感じさせ、多重スクロールやラスタースクロールといった、ファミコンとしては高度な技術も使われている。そして元コナミの水谷郁氏によるBGMは、これぞアクションゲーム・ミュージックだ。終始ノリノリで、どこかコナミックなメロディは、ゲームを最高に盛り上げてくれる。
元々は意欲的なオリジナル作品として開発されながら、「特撮キャラゲー」というレッテルに埋もれてしまった感もある『特救指令ソルブレイン』。だが、発売時期的にも、完成度的にも、言わばナツメFCアクションの集大成的な作品と言える。硬派アクションゲーマーはもちろん、誰でも気軽に楽しく遊べる逸品だ。 |
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